【nagi】
2021年12月06日
火花が散った。
幾重にも折り重ねた玉鋼は、妙妙たる輝きを持った。
しかしながら、その鋭さは斬る者無くして語られることはない。
透き通る声がなぞるあの歌も
貴方の耳を通らなければ必ず消える。
路肩に咲く小さい花の美しさも
それを写し出す君が居なくては誰も気づけない。
虚しいとも思った。
哀しいとも思った。
気まぐれで歩を進める。
どうやらここは海辺に近い。
遠く聴こえる海鳥と汽笛の中に佇む私は未だ一人だ。
優しく撫でてくれた風も止まった。
海面には波一つ無い。
切り取られたようにそこに居る風車。
撃鉄を起こした。
迷いもなく薙いだ焦燥。
さらば愛すべき日々。
少しだけ私を巻き戻してくれ。