【香水】
2019年10月22日
手首に2回。頭の上に1回ふりかける。
出かける前のルーティンだった。
甘い匂いが苦手な私はいつも柑橘の香りがする香水をつけている。
お洒落には特別興味があるわけではないが、好きな香りを纏って街を歩くのが好きだった。
とある日、街行く人が過ぎ去るときにふと、懐かしい香りがした。
既に忘れかけていた昔のこと、
いつかの自分にも恋い焦がれていた人がいた。
甘い匂いが苦手な私はいつも柑橘の香りがする香水をつけている。
手首に2回。頭の上に1回。
なのにその人は意地悪な顔をして私の足首に自分の香りを付ける。
最早、郷愁にも近しい想いを馳せる最中、ふと立ち止まった街の端で
薄まった柑橘の中に、淡く甘い匂いが混ざった気がした。