【文学少年】
2019年09月28日
本を読むのが好きなんだ。
僕がこの先何十年生きたとて、到底見きれぬ世界がそこには広がっている。
紙の上に綴られた軌跡。インクの匂いに浸された物語と、ほんの少しだけの感情。
プロローグはもう始まっている。
あとがきだって考えている。
でも、どうしてもページが捲れないんだ。
指先が震える。怖くなって栞を挟んで、コーヒーを一口。
きっとこの先も、気づけないことはいつだってすぐ傍に佇んでいるんだろう。
そうしていつしか何も思い浮かばなくなってしまった。
このだだっ広い銀河の片隅で、誰にも知られずにいるくらいなら。
やけくそになって、動脈を切ったかのように空白のノートど真ん中へ
「生き延びる」
と、書いてみた。