【ホタル】
2019年10月04日
地球の裏側で星が滲む。
滲みになった足跡と消えかかる飛行機雲。
淡い季節が代わる。
「暖かいものが飲みたいなあ」
そう呟いた君は手をさすりながら外へ出た。
昨日の僕ならきっと手を引いていただろう。
胸が痛くなるのは、もう泣けないからだと思う。きっと。
悲しくなって下を向いてみた。
小さい花だ。弱弱しく惨めな、とても綺麗な花だった。
明日よどうか快晴になってくれ。
少しだけ上を向く理由をくれ。
月すら霞む夜空に1つ、光がよぎった。
ベランダに出るのすら億劫だというのに。
既に冷め切ったコーヒーを片手に鍵を開けた。
そこには疾うの昔に捨てた花瓶と1匹の蛍がいた。